背景を知ればより楽しめる、映画『フライト・ゲーム』レビュー

主演リーアム・ニーソン。

リーアム・ニーソンは好きな俳優さんでして、特に「96時間」は最高ですね。なので見る前から割と期待もしてたんですが不安もありました。

それは似た名前の映画「フライトプラン」(主演ジョディ・フォスター)の存在。このフライトプランは色々な意味で衝撃的だったので、この映画もまさかこんな感じ?と思っておりました。ですが見終わってみると全然そんなこともなく、普通に面白くてホッとしました

あらすじは、

航空保安官ビル・マークス(リーアム・ニーソン)は飛行機に搭乗中、脅迫メールを受け取る。金を指定の口座に入れないと乗客が死ぬ、というイタズラじみたメールだったが実際に乗客が亡くなり、爆弾まで見つかる。乗員乗客150人の中にいる容疑者を特定するのは困難を極め・・・。

という感じ。

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雰囲気は良い

まずビルがかっこいいんですよ。NY市警を解雇された後、航空保安官に転職しているんですが影のある感じが渋い。少なくとも機内では有能っぷりを発揮していて、最後には犯人を退治してめでたしという展開もわかりやすくて良い。

ただ、最初に見た時は多少違和感があったんですよね。それが何なのかわからなかったんですが、最近見返してわかりました。

それは航空保安官に対して乗客が反発しすぎじゃない?という点。

自分が飛行機に乗っていて、保安官(日本にはいないけど)が急に機内の捜索や乗客の持ち物検査を始めたら静かに従っちゃうと思うんですよ。何かあったんだろうと思って。

でも乗客はメチャクチャに反発するんですよ。ちょっと持ち物検査するだけなのに「権力の濫用だ!!」とか叫んだりして。確かに、急に飛行機が空港に引き返すし、詳しいことも言ってくれないので不審に思うのはわかるんだけど、それにしても反発しすぎでは?と思って見ていたんですよ。

でも、どうやらこれってアメリカ国内の世論みたいなものが反映されてるようなんですね。全然知りませんでした。

航空保安官に対する風当たり

そもそも航空保安官って聞きなじみが無いんですが、wikipediaによると

アメリカの航空会社・空港・乗客・乗員に対する敵性行動を察知・抑止・阻止する。
職掌がら、航空保安官は援護なしに独立して職務を遂行することが多い。保安官は職員として、拳銃の取り扱いの精密性を最上級に保つことが求められる。保安官の職務は、他の乗客に混じって飛行機に搭乗し、調査テクニック・テロリストの挙動の発見・銃の技能・飛行機特有の方法論・近距離での護身術などの訓練を活かし、一般乗客を護衛することである。

ということらしい。

で、9.11以降、航空保安官の数を増やすことにしたみたい(9.11以前は33人しかいなかったらしい)。急に人材を確保出来ないから他の部署(関税局や国境警備隊)から異動して、訓練をして保安官の仕事に就く(今では数千人いるらしい)。ただ、訓練したとはいえいわば素人みたいなものなので大して役に立ってなかったみたいなんですよね。映画の中でも「ただ飛行機に乗って座ってるだけ」とニュースキャスターに揶揄されるシーンがある。

米航空保安官、機内トイレに実弾入りの銃置き忘れ(CNN)

こんな記事もあったり。この記事によると長時間労働だったり勤務環境も悪いみたいです。

は~こんな背景があったんだな~と勉強になりました。

こういうのがわかった上で見るとまた違って見えるんですよね。ビルは周りからなんやかんや言われたり、長時間労働の中頑張ってたんだな~と。

そんな周りから批判に晒される航空保安官が、悪人を成敗してヒーローになるってちょっと出来すぎとはいえ、単純に見てて気持ちよかったし面白かったです。

気になる点はあるが引き込まれる

それにビル(というかリーアム・ニーソン)がかっこいいんですよ。

最後のほうで犯行の理由を犯人がビルに言うシーンがあるんですが、それに対してビルが「そういう啓蒙活動をしてた方が良かったんじゃないか?」っていうシーンにはクスりとしたし、飛行機が急降下して拳銃がフワッっと浮いたのをビルが掴むシーンには笑っちゃいましたが良かったですね。

もちろん気になる点もあるといえばあるんですよ。

肝心の犯行動機の部分がちょっとよくわからなかったり(「お前は嘘の象徴なんだ!」ってところも「???」でした)、あんな小さい穴から吹き矢で機長を狙うって無茶では?とか、犯人の1人が後半には唐突に着ていたスーツを脱いで筋肉ムキムキの武闘派になってたり。まあでも細かいことですね。

映画のシーンが基本飛行機の中だけなんですが、単調にならないしテンポも良いので飽きずに最後まで見られます。