毒親とは―『毒になる親』を読んで

感想というより、読んでない人はぜひ読んでほしいなと。

最近読みました。

「毒親」ってたまに聞いたことがあったけどこれが元になってるらしい。

ちなみに元々興味があった本というわけじゃないが、書店で目に付いて立ち読みしたところ、続きが気になって購入。

で、この本は本当にレベルが違う。本質をついてるなあという印象。もっと早く読んでおきたかったと思える本。

タイトルからすると問題の有る親(毒親)に育てられた人だけが読めばいい本に感じるかもしれないが、そうではない。むしろ「自分は幸せな家庭で育った」と感じている人にこそ読んでほしい

 

自分が無意識の内にしている考え方、無意識にしている人との付き会い方等が丁寧にゆっくりと「親との繋がり」という観点からどう影響しているのかを記述している。読んでみて、この「無意識」というものが自分というものの大部分を形成しているんだなと感じた。そして難しいのは、ほぼ全ての人は無意識は意識出来ないというところ。

この本を読んでいくと、そういう無意識の部分を多少なりとも感じられるようになるはず。で、そこに影響してるのは「親」という存在なわけだが、本書にも書いてある通りそもそも「全て親のせい」にして「親を批判する」ことが目的ではない。重要なのは客観的に自分を見ることであり、その過程で批判したくなることもあるだろうし批判したいならすれば良いんだけどそれは本質では無いということ。

結局のところ、毒親(ちなみにこれはToxic parentsを翻訳したもの)というのは批判しても何も変わらない、変わらないからこそ毒親である、という理論が展開。

じゃあどうすればいいの?っていう話だけど、結局のところ自分が変わるしかない。で、この本の最大級に良い所は「親を批判したって何も変わらないんだから批判するな、自分が変われ」などと無責任に丸投げして終わりじゃない所。

実際の具体例を挙げて、一つ一つ、毒親に育てられた人はどういう状況でどういう感情を抱くのかといった本質的な部分を解説し、じゃあどう考えれば良いのかということが丁寧に書かれている。

自分の感情が如何に親から(良くも悪くも)影響を受けてきたのかがわかる。

 

そして、多くの場合毒親もまた毒親に育てられたことがほとんど(らしい)。著者は医療機関でセラピストとして数多くの人間を見てきたという。

毒親に育てられた人からすると、その毒親自身もひどい家庭環境にあったと聞いて同情する気持ちが湧いてきても、それが自分の本心からなのか、毒親にいわば洗脳された故の感情なのかわからない。「親を批判してはいけない」といった自分の中に存在する「無意識」の中に隠れた感情を読み解くことが問題の解決の第一歩である。

こういう問題の本質を理解するきっかけになる。

 

また、一言で毒親と言っても様々であり例えば「暴力を振るう」「暴言を吐く」と言った「何かをしてきた親」。こういう親に育てられた子供は、親が原因であることを自覚しているため解決への道が近い。

そして問題は「何かをしてこなかった親」。例えば「子供を全く褒めない」「子供の意見を聞こうとしない」というタイプ。こういうタイプに育てられた子供はそもそも親が原因であることに気付いてないことが多い。そればかりか「親は悪くない」「親のせいにするつもりはない」と頑なに認めようとしないこともあるという。こういった「親のせいにしてはいけない」という感情を歪んで内に秘めている人は読むと違った見え方が出来るはず(もちろんなんでも親のせいにすればいいという訳ではない)。

「自分の問題は自分の責任ではないか」ということについて
「自分の問題を他人のせいにしてはならない」というのはもちろん正しい。けれども結論から先に言えば、それをそのまま幼い子供に当てはめることはできない。自分を守るべすべを知らない子供だった時に大人からされたことに対して、あなたに責任はないのである。幼い子供に対して親がしたことに関するかぎり、すべての責任はその親が負わなければならない。
 もちろん、私たちは、大人になってから後の人生については自分に責任がある。だが、その人間がどのような大人に成長するかということは、成長の過程において自分の力ではコントロールできない家庭環境というものによって大きく影響され、それによってその後の人生の多くが決定されてしまうということも忘れてはならない。 
 大人としてのあなたの責任とは、現在自分が抱えている問題に対していますぐ建設的な対策を講じ、問題を解決する努力をすることなのである。

(毒になる親,スーザン・フォワード,玉置悟訳,pp18-19)

で、本書にも書いてあるが、この本を読んだからと言って存在する全ての問題が解決するなどという魔法のようなことは無い。ただ、大きなきっかけになるのは間違いない。

多くの人に読んでほしい。